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ゲーム理論から学ぶ、採用と人材マネジメントの最適解

「この人を信じていいのか?」――人事担当者が常に向き合う問い
採用、人材マネジメント、労務管理において、「どこまで人を信用するべきか?」という課題に直面することは多い。心理学者アドラーは「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と語ったが、まさに採用や組織運営においてもこれは当てはまる。
「ゲーム理論」という学問がある。一見、遊びのように聞こえるが、数学者ジョン・フォン・ノイマンと経済学者オスカー・モルゲンシュテルンが1944年に発表した、意思決定に関する学術的理論だ。
この中の代表的な概念が「囚人のジレンマ」である。
採用と組織マネジメントに潜む「囚人のジレンマ」
ある犯罪の容疑で、2人の囚人AとBが捕まり、別々の部屋で取り調べを受けている。
彼らには次の選択肢がある。
1.お互いに黙秘する(協力) → 人とも軽い刑(懲役1年)で済む。
2.どちらかが相手を裏切る(自白する) → 自白した方は無罪放免、裏切られた方は懲役10年。
3.2人とも自白する(お互いに裏切る) → 2人とも懲役5年。
この状況のポイントは、「相手がどうするかわからないまま、自分の決断をしなければならない」こと。

実はこのジレンマは、採用や労務管理の現場でも発生する。
「信頼」と「警戒」のバランスはどこにあるのか?
採用の場面では、候補者が提出する履歴書の内容をどこまで信じるか?
社員の評価では、業績報告や上司の推薦をどこまで鵜呑みにするか?
マネジメントでは、部下の自己申告をどこまで信用し、裁量を与えるべきか?
無条件に信頼するとどうなるか?
・ うまくいけば、相手が誠実に応えてくれ、信頼関係が深まる。
・ しかし、もしも虚偽の情報があった場合、採用ミスや不正が発生する可能性がある。
最初から疑ってかかるとどうなるか?
・ 不正のリスクは減るが、候補者や社員が「信頼されていない」と感じ、組織の関係性がぎくしゃくする。
・ 信頼をベースにした社内文化を築きにくくなる。
つまり、「常に信用する」のも「常に疑う」のも、どちらもリスクを伴うのだ。

「繰り返しゲーム」で本質を見極める
「囚人のジレンマ」には、1回きりの勝負(ワンショットゲーム)と、何度も繰り返す勝負(繰り返しゲーム)がある。
人生や組織運営は「繰り返しゲーム」だ。
つまり、一度の採用や評価で全てを決めつけるのではなく、長期的な関係の中で相手を見極め、信頼を積み重ねることが重要になる。
短期的には慎重に観察する → 履歴書の裏付け、面接での多面的な評価、試用期間の活用。
長期的には信頼を深める → 業務を通じてその人の姿勢を確認し、適切な裁量と責任を持たせる。
このバランスが、最も合理的な戦略となる。
採用担当者・人事が実践すべき「ゲーム理論的アプローチ」
1. 最初は信用しすぎず、疑いすぎず、ニュートラルな視点で接する。
→ 候補者の発言を鵜呑みにせず、裏付けを取る一方で、最初から疑ってかかるのではなく、公平な視点を持つ。
2. 一度のミスで判断せず、繰り返しの関係の中で本質を見極める。
→ 採用時の評価と、入社後の実績をセットで考え、定期的なフィードバックや評価制度を活用する。
3. 相手の誠実さを確認しながら、段階的に信頼を深める。
→ 「この人は信じられる」と確信できるまで、適切な距離感を持ちつつ、関係を構築していく。
まとめ
採用、人材マネジメントは、単なる評価の積み重ねではなく、「信頼の構築」という側面が大きい。
ゲーム理論の視点を持って人と関わることで、最適な「信頼」と「慎重さ」のバランスが見えてくる。
一度の面接や評価だけで全てを決めるのではなく、長期的な視点を持ち、「繰り返しゲーム」の中で人を見極めることが、組織にとって最も合理的な戦略となる。
Corkは、ゲーム理論をはじめとした科学的な視点を活用し、企業の採用戦略・組織マネジメントをサポートしています。
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Cork株式会社 代表取締役 松野 健太
